大阪地方裁判所 平成7年(ワ)6967号 判決 1997年4月28日
主文
一 原告山洋食品は、被告会社に対し、支払期日を平成四年九月三〇日とする追加入店保証金四五二万一四〇〇円の支払義務がないことを確認する。
二 原告北浦は、被告会社に対し、支払期日を平成四年九月三〇日とする追加入店保証金八五九万四七一五円の支払義務がないことを確認する。
三 原告美喜食品は、被告会社に対し、支払期日を平成四年九月三〇日とする追加入店保証金五四七万七八五〇円及び平成六年四月一日請求にかかる同年四月分施設改善特別賃料金六万三七八六円の支払義務がないことを確認する。
四 原告おたふくは、被告会社に対し、支払期日を平成四年九月三〇日とする追加入店保証金五三〇万三九五〇円の支払義務がないことを確認する。
五 被告会社は、原告おたふくに対し、金一一万九九二六円及びこれに対する平成七年五月一七日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。
六 原告尾田は、被告会社に対し、金一〇八五万一三六〇円及びこれに対する平成六年四月一日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員並びに金二〇二万一七二八円及びこれに対する平成七年六月二六日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。
七 原告山洋食品は、被告組合に対し、金二一三万六九四〇円及びこれに対する平成七年七月一日から支払済みまで年一〇・九五パーセントの割合による金員を支払え。
八 原告北浦は、被告組合に対し、金三四六万〇一九九円及びこれに対する平成七年七月一日から支払済みまで年一〇・九五パーセントの割合による金員を支払え。
九 原告美喜食品は、被告組合に対し、金二四四万〇六二〇円及びこれに対する平成七年七月一日から支払済みまで年一〇・九五パーセントの割合による金員を支払え。
一〇 原告おたふくは、被告組合に対し、金二五〇万四九〇四円及びこれに対する平成七年七月一日から支払済みまで年一〇・九五パーセントの割合による金員を支払え。
一一 被告馬やどは、被告組合に対し、金八二八万四七五二円及びこれに対する平成七年七月一日から支払済みまで年一〇・九五パーセントの割合による金員を支払え。
一二 被告エーワンベーカリーは、被告組合に対し、金九一九万七〇六一円及びこれに対する平成七年七月一日から支払済みまで年一〇・九五パーセントの割合による金員を支払え。
一三 被告長谷川は、被告組合に対し、金三五八万三四八四円及びこれに対する平成七年七月一日から支払済みまで年一〇・九五パーセントの割合による金員を支払え。
一四 原告山洋食品、原告北浦、原告美喜食品及び原告おたふくの被告組合に対する請求、原告尾田の請求、被告会社の原告山洋食品、原告北浦、原告美喜食品、原告おたふく及び被告馬やどに対する請求並びに被告組合の原告おたふく及び被告長谷川に対するその余の請求をいずれも棄却する。
一五 訴訟費用中、原告山洋食品に生じた費用の五分の一及び被告組合に生じた費用の二〇分の一を原告山洋食品の負担とし、原告北浦に生じた費用の二〇分の三及び被告組合に生じた費用の一〇分の一を原告北浦の負担とし、原告尾田に生じた費用、被告組合に生じた費用の二〇分の三及び被告会社に生じた費用の二〇分の三を原告尾田の負担とし、原告美喜食品に生じた費用の二〇分の三及び被告組合に生じた費用の二〇分の一を原告美喜食品の負担とし、原告おたふくに生じた費用の五分の一及び被告組合に生じた費用の一〇分の一を原告おたふくの負担とし、被告馬やどに生じた費用の五分の一及び被告組合に生じた費用の五分の一を被告馬やどの負担とし、被告エーワンベーカリーに生じた費用及び被告組合に生じた費用の五分の一を被告エーワンベーカリーの負担とし、被告長谷川に生じた費用の五分の三及び被告組合に生じた費用の一〇分の一を被告長谷川の負担とし、被告長谷川及び被告組合に生じたその余の費用を被告組合の負担とし、原告山洋食品、原告北浦、原告美喜食品、原告おたふく、被告馬やど及び被告会社に生じたその余の費用を被告会社の負担とする。
一六 この判決は、第五ないし第一三項に限り、仮に執行することができる。
理由
【事実及び理由】
第一 請求
一 A1事件
1 被告組合の平成三年三月二二日開催の臨時総会における虹のまちリボーン’93にかかる特定共同施設事業計画(案)及び施設改善事業計画(案)に関する件を承認、可決する旨の決議は無効であることを確認する。
2 主文第一、二項と同旨
二 A2事件
原告山洋食品は、被告会社に対し、金九〇四万二八〇〇円及び内金四五二万一四〇〇円に対する平成四年一〇月一日から、内金四五二万一四〇〇円に対する平成六年四月一日から各支払済みまで年六パーセントの割合による金員並びに金六八万四四三七円及びこれに対する平成七年三月二六日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。
三 A3事件
原告北浦は、被告会社に対し、金一七一八万九四三〇円及び内金八五九万四七一五円に対する平成四年一〇月一日から、内金八五九万四七一五円に対する平成六年四月一日から各支払済みまで年六パーセントの割合による金員並びに金一四四万九二六七円及びこれに対する平成七年九月二六日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。
四 B事件
被告馬やどは、被告会社に対し、金三五〇五万八二四〇円及び内金一七五二万九一二〇円に対する平成四年一〇月一日から、内金一七五二万九一二〇円に対する平成六年四月一日から各支払済みまで年六パーセントの割合による金員並びに金二六五万三五二一円及びこれに対する平成七年三月二六日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。
五 C1事件
1 右一1と同旨
2 原告尾田は、被告会社に対し、平成六年四月一日請求にかかる同年四月分施設改善特別賃料金一二万六三五八円の支払義務がないことを確認する。
3 主文第三ないし第五項と同旨
4 被告会社は、原告尾田に対し、金一〇八五万一三六〇円及びこれに対する平成七年五月一七日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。
5 原告美喜食品は、被告組合に対し、平成六年一一月一五日請求にかかる同年一一月分高度化事業特別賦課金一三万二〇一七円及び共同施設火災保険賦課金一九五三円の支払義務がないことを確認する。
6 原告おたふくは、被告組合に対し、平成七年二月二二日請求にかかる高度化事業特別賦課金及び共同施設火災保険賦課金の滞納分(平成六年一一月分から平成七年一月分まで)金三八万九一五一円の支払義務がないことを確認する。
7 被告組合は、原告尾田に対し、金五一二万八六五六円及びこれに対する平成七年五月一七日から支払済みまで年五パーセントの割合による金員を支払え。
六 C2事件
1 主文第六項と同旨
2 原告美喜食品は、被告会社に対し、金一〇九五万五七〇〇円及び内金五四七万七八五〇円に対する平成四年一〇月一日から、内金五四七万七八五〇円に対する平成六年四月一日から各支払済みまで年六パーセントの割合による金員並びに金一〇二万〇五七六円及びこれに対する平成七年六月二六日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。
3 原告おたふくは、被告会社に対し、金一〇六〇万七九〇〇円及び内金五三〇万三九五〇円に対する平成四年一〇月一日から、金五三〇万三九五〇円に対する平成六年四月一日から各支払済みまで年六パーセントの割合による金員並びに金八六万四六五四円及びこれに対する平成七年六月二六日から支払済みまで年六パーセントの割合による金員を支払え。
七 D事件
1 主文第七ないし第九項及び第一一、一二項と同旨
2 原告おたふくは、被告組合に対し、金二五〇万六七九五円及びこれに対する平成七年七月一日から支払済みまで年一〇・五パーセントの割合による金員を支払え。
3 被告長谷川は、被告組合に対し、金六五〇万九四四八円及びこれに対する平成七年七月一日から支払済みまで年一〇・五パーセントの割合による金員を支払え。
第二 事案の概要
本件は、被告組合の組合員であり、被告会社から地下街の店舗を賃借している原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく、被告馬やど、被告エーワンベーカリー及び被告長谷川が被告組合の前記第一の一1の総会決議が無効であると主張し、一方、被告組合及び被告会社が右決議が有効であると主張して、
一 原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品及び原告おたふくが被告組合に対し右決議の無効確認を(A1、C1各事件)、
二 被告組合の組合員に対する右決議に基づく事前積立賦課金について、
1 被告組合が原告山洋食品、原告北浦、原告美喜食品、原告おたふく、被告馬やど、被告エーワンベーカリー及び被告長谷川に対し右賦課金及び弁済期後の定款所定の割合による遅延損害金の支払を(D事件)、
2 原告尾田が被告組合に対し事前積立賦課金として既に支払った金員が不当利得にあたるとして、右金員及び訴状送達の日の翌日以降の民法所定の割合による遅延損害金の支払を(C1事件)、
三 被告組合の組合員に対する右決議に基づく高度化事業特別賦課金及び共同施設火災保険賦課金について、原告美喜食品及び原告おたふくが被告組合に対し債務不存在確認を(C1事件)、
四 被告会社の右地下街の店舗の賃借人に対する右決議に基づく追加入店保証金について、
1 被告会社が原告山洋食品(A2事件)、原告北浦(A3事件)、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく(右三名につきC2事件)及び被告馬やど(B事件)に対し追加入店保証金又は同額の不当利得金及び弁済期後の商事法定利率による遅延損害金の支払を、
2 原告山洋食品、原告北浦、原告美喜食品及び原告おたふくが被告会社に対し債務不存在確認を(A1、C1各事件)、
3 原告尾田が被告会社に対し追加入店保証金として既に支払った金員が不当利得にあたるとして、右金員及び訴状送達の日の翌日以降の民法所定の割合による遅延損害金の支払を(C1事件)、
五 被告会社の右地下街の店舗の賃借人に対する右決議に基づく施設改善特別賃料について、
1 被告会社が原告山洋食品(A2事件)、原告北浦(A3事件)、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく(右三名につきC2事件)及び被告馬やど(B事件)に対し右特別賃料又は同額の不当利得金及び弁済期後の商事法定利率による遅延損害金の支払を、
2 原告尾田及び原告美喜食品が被告会社に対し債務不存在確認を(C1事件)、
3 原告おたふくが被告会社に対し右特別賃料として既に支払った金員が不当利得にあたるとして、右金員及び訴状送達の日の翌日以降の民法所定の割合による遅延損害金の支払を(C1事件)、
それぞれ求めた事案である。
第三 事実及び争点
一 争いのない事実等(証拠により認定した場合は、後に証拠を掲げる。)
1 当事者等
被告組合は、商店街振興組合法に基づいて設立された法人であって、大阪市中央区難波二丁目所在の地下商店街(現在の通称は、「なんばウォーク・虹のまち」である。以下「虹のまち地下街」という。)において小売業、サービス業等を営む者を組合員としている。そして、被告組合の定款には、別紙記載のとおりの規定がある。
被告会社は、地下街の店舗等の所有管理、賃貸等を目的とする会社であり、虹のまち地下街の店舗その他の設備を所有し、虹のまち地下街において小売業、サービス業等を営む者と賃貸借契約を締結し、これを賃貸している。
原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく、被告馬やど、被告エーワンベーカリー及び被告長谷川(以下、右八名を「本件賃借人ら」と総称する。)は、被告会社と虹のまち地下街の店舗の賃貸借契約を締結して、同所で小売業、サービス業等を営む者であり、かつ、被告組合の組合員である。
2 被告会社と賃借人との間の契約
(一) 被告会社は、虹のまち地下街で小売業、サービス業等を営む者との間の賃貸借契約において、賃借人に対し、被告組合に加入することを義務づけている。
被告会社は、右賃貸借契約を締結する場合のほか、虹のまち地下街において小売業、サービス業等を営もうとする者との間で売上額の一定割合を被告会社に納める、いわゆる歩合制の契約(以下「委託直営契約」という。)を締結する場合があり、この場合には、被告会社から営業を受託した者は、被告組合の組合員とはならない。
(二) 原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく、被告馬やど及び被告エーワンベーカリーは、被告会社から、毎月二五日限り翌月分の賃料を支払うとの約定で、虹のまち地下街の店舗を賃借しており、それぞれの店舗賃借面積及び営業種別は次のとおりである。
(1) 原告山洋食品
賃借面積 二六・〇平方メートル
営業種別 喫茶店
(2) 原告北浦
賃借面積 四二・一平方メートル
営業種別 紳士服店
(3) 原告尾田
賃借面積 六二・四平方メートル
営業種別 お好み焼き店
(4) 原告美喜食品
賃借面積 三一・五平方メートル
営業種別 寿司店
(5) 原告おたふく
賃借面積 三〇・五平方メートル
営業種別 寿司店
(6) 被告馬やど
賃借面積 一〇〇・八平方メートル
営業種別 喫茶軽食店
(7) 被告エーワンベーカリー
賃借面積 一一一・九平方メートル
営業種別 食品・飲食店
(三) 被告長谷川は、後記総会決議当時、虹のまち地下街内の隣接する二軒の店舗において、洋品店を営業しており、そのうち一軒(面積四三・六平方メートル)については被告会社と賃貸借契約を締結していたが、残りの一軒(面積三三・六平方メートル)については、委託直営契約であった。
3 総会決議の成立
被告組合は、平成三年三月二二日、臨時総会を開催し、虹のまち地下街の全面改装事業(事業の名称は「虹のまちリボーン’93」という。)にかかる特定共同施設事業計画(案)及び施設改善事業計画(案)が審議され、右各議案は承認、可決された(以下、この決議を「本件総会決議」という。)。右各議案には、右改装事業を実施するために要する組合員の費用負担案が含まれていた。
被告組合の総会の議事は、被告組合の定款三五条一項により、特別の場合を除き、総組合員の半数以上が出席し、出席者の過半数で決することとされているところ、右総会には、当時の総組合員二六八名のうち二〇八名が出席し、三八名が委任状を提出し、委任状提出者を含め一七三名の組合員が右各議案に賛成した。
4 特定共同施設事業計画
右総会で承認、可決された特定共同施設事業計画の内容は、次のとおりである(被告馬やど、被告エーワンベーカリー、被告長谷川の関係で)。
(一) 被告組合は、「中小小売商業振興法」に基づく高度化資金貸付規則による貸付制度を利用して、虹のまち地下街内の公共道路の床面、壁面、天井、照明、階段、上屋、公共広場、公衆トイレ、サイン及び情報機器等の工事を実施する。
右改装事業の総事業費は八五億円とし、被告組合は、右八五億円のうち一七億円については自己資金で調達し、その余の六八億円については、大阪府から高度化事業借入金の融資(無利子)を受けて調達する(以下、右借入れにかかる資金を「高度化資金」という。)。
(二) 被告組合の自己資金の調達については、組合員がその店舗の面積に応じて、一平方メートルあたり総額一一万三〇四〇円の割合で負担する。具体的には、組合員が被告組合に対し、本件総会決議の後、二年間にわたり一平方メートルあたり月額四七一〇円の割合による事前積立賦課金を支払う。
(三)(1) 被告組合は、大阪府に対し、高度化資金を三年の据置期間の後、一七年にわたって分割返済する。
(2) 被告組合の大阪府に対する右返済のための資金は、組合員が店舗の面積に応じて、一平方メートルあたり総額四五万二一五〇円の割合で負担する。具体的には、組合員が被告組合に対し、改装工事の全面竣工後、一七年にわたって、一平方メートルあたり月額二二二〇円の割合による高度化事業特別賦課金を支払う。
(3) この他、火災保険料を一平方メートルあたり月額八〇円の割合による共同施設火災保険賦課金として支払う。
(四) この計画の実施にあたり、必要な細目の決定については被告組合理事会に一任する。
5 施設改善事業計画
前記総会で承認、可決された施設改善事業計画の内容は、次のとおりである(被告馬やど、被告エーワンベーカリー、被告長谷川の関係で)。
(一) 被告会社は、被告組合による前記特定共同施設事業の実施に合わせ、電気設備、空調設備、給水設備及び防災設備等を更新、新設する。
右改装事業の総事業費は八六億一〇〇〇万円とし、被告会社は、そのうち一二億円を負担し、その余の七四億一〇〇〇万円は、賃借人すなわち組合員が後記(二)の方法で負担する。
(二) 組合員の負担方法として、組合員と被告会社との間の店舗賃貸借契約上の負担内容を次のとおり変更する。
(1) 追加入店保証金
組合員は、被告会社に対し、その営業種別及び店舗の賃借面積に応じ、左記のとおり追加入店保証金を負担する。
記
<1> 洋品・サービスの営業をする組合員は、一平方メートルあたり四二万三五〇〇円
<2> 飲食・食品の営業をする組合員は、一平方メートルあたり三六万三〇〇〇円
追加入店保証金は、平成四年四月及び平成五年一一月の二回に分け、それぞれ二分の一ずつ支払う。
被告会社は、組合員から徴収した追加入店保証金につき、洋品・サービスの営業店舗については一平方メートルあたり一一万円を、飲食・食品の営業店舗については一平方メートルあたり九万円をそれぞれ施設改良負担金として収入受けして返還しないものとし、残額については組合員が虹のまち地下街から退去する時に一括して返還する。
(2) 施設改善特別賃料
賃借人は、被告会社に対し、施設改善特別賃料(以下「特別賃料」という。)として、一か月一平方メートルあたり二三六〇円を、改装工事が終了して虹のまち地下街全体が新装開業した後である平成五年一二月から二〇年間にわたり支払う。
6 大阪府による高度化事業計画の認定、改装事業の完了
被告組合の前記4の事業計画は、平成四年五月二七日、大阪府により、中小小売商業振興法四条一項に基づく高度化事業計画に認定された。そして、平成六年四月一六日までに虹のまち地下街の改装工事は完了し、同日、地下街の営業が全面的に再開された(以下、前記4、5の事業を「本件改装事業」という。)。
7 被告組合に対する事前積立賦課金の負担額
(一) 被告組合理事会は、本件総会決議を受けて、組合員からの事前積立賦課金の徴収開始時期を平成三年八月からと決定し、その後、総事業費が当初の予定から減縮したことを受けて、積立額が一平方メートルあたり八万二一九〇円になった時点で、事前積立賦課金の徴収を打ち切ることとした結果、組合員に課される事前積立賦課金の額は、平成三年八月分から平成四年一二月分までは一か月一平方メートルあたり四七一〇円に、平成五年一月分は一平方メートルあたり二一二〇円に、それぞれ店舗の面積と未払期間を乗ずることにより算出されることとなった。なお、被告会社との契約が委託直営契約である場合には、事前積立賦課金の支払義務はない。
(二) 原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく、被告馬やど及び被告エーワンベーカリーについて、その店舗賃借面積に応じた事前積立賦課金の額が次のようになることは計算上明らかである。
(1) 原告山洋食品
期間 平成三年八月分から平成五年一月分まで
総額 二一三万六九四〇円
(2) 原告北浦
期間 平成三年八月分から平成五年一月分まで
総額 三四六万〇一九九円
(3) 原告尾田
期間 平成三年八月分から平成五年一月分まで
総額五一二万八六五六円
なお、原告尾田は、被告組合に対し、右事前積立賦課金として、平成四年五月一九日までに二九三万九〇四〇円を、平成五年一〇月七日までに二一八万九六一六円(合計五一二万八六五六円)をそれぞれ支払った。
(4) 原告美喜食品
期間 平成三年九月分から平成五年一月分まで
総額 二四四万〇六二〇円
なお、原告美喜食品は、事前積立賦課金の平成三年八月分として一四万八三六五円を既に支払った。
(5) 原告おたふく
期間 平成三年八月分から平成五年一月分まで
総額 二五〇万六七九五円
なお、原告おたふくは、事前積立賦課金の一部として一八九一円を既に支払った。
(6) 被告馬やど
期間 平成三年八月分から平成五年一月分まで
総額 八二八万四七五二円
(7) 被告エーワンベーカリー
期間 平成三年八月分から平成五年一月分まで
総額 九一九万七〇六一円
(三) 事前積立賦課金は、被告組合の経理上、各組合員からの借入金として処理される。被告組合は、平成六年一〇月五日開催の臨時総会において、事前積立賦課金と後記の特別賦課金及び火災保険賦課金とを相殺処理すること、ただし、事前積立賦課金の支払を完了していない組合員については、借入金としての処理ができないので、右特別賦課金及び火災保険賦課金を平成六年一一月分から実額徴収することを決議した。
8 被告組合の原告美喜食品及び原告おたふくに対する高度化事業特別賦課金等の請求
(一) 本件改装事業が平成六年四月一六日までに完了し、自己資金及び借入金返済資金として組合員の負担すべき金額が五九億三九四七万七一九〇円と確定したことを受けて、被告組合は、平成六年一〇月五日開催の臨時総会において、組合員に対する賦課金について、左記のとおり決議した。
記
(1) 高度化資金の返済に充てるための特別賦課金(以下「高度化事業特別賦課金」という。)として、平成六年一一月分から平成七年三月分までは一か月一平方メートルあたり四一九一円、平成七年四月分から平成二八年三月分までは一か月一平方メートルあたり一四六二円を賦課する。
(2) 共同施設の火災保険料(以下「共同施設火災保険賦課金」という。)として、平成七年三月分までは一か月一平方メートルあたり六二円、平成七年四月分以降は一か月一平方メートルあたり五七円を賦課する。
(二) 被告組合は、平成七年五月二九日開催の通常総会において、高度化事業特別賦課金及び共同施設火災保険賦課金の徴収方法について、毎月一五日に請求し、同月末日までに徴収することを決議した。
(三) 原告美喜食品の平成六年一一月分の高度化事業特別賦課金は一三万二〇一七円、共同施設火災保険賦課金は一九五三円となるところ、被告組合は、平成六年一一月一五日、原告美喜食品に対し、高度化事業特別賦課金一三万二〇一七円及び共同施設火災保険賦課金一九五三円の支払を請求した。
(四) 原告おたふくの平成六年一一月分から平成七年一月分までの高度化事業特別賦課金は三八万三四七八円、共同施設火災保険賦課金は五六七三円(以上合計三八万九一五一円)となるところ、被告組合は、平成七年二月二二日、原告おたふくに対し、平成六年一一月分から平成七年一月分の高度化事業特別賦課金及び共同施設火災保険賦課金として三八万九一五一円の支払を請求した。
9 被告会社の請求する追加入店保証金及び特別賃料
(一) 本件総会決議後の被告会社と被告組合との合意による負担条件の変更
本件総会決議の後、被告会社と被告組合との間で協議が行われ、施設改善事業計画に関し、次のとおり合意が成立した。
(1) 追加入店保証金の支払時期は、平成四年九月末日及び平成六年三月末日とする。
(2) 洋品・サービスの営業をする組合員に対する追加入店保証金は、店舗面積一平方メートルあたり四〇万八三〇〇円とする。
(3) 飲食・食品の営業をする組合員に対する追加入店保証金は、店舗面積一平方メートルあたり三四万七八〇〇円とする。
(4) 特別賃料は、店舗面積一平方メートルあたり一か月一九六六円とする。
(5) 特別賃料の支払期間は、平成六年四月から二〇年間とする。
(二) (一)の合意内容による原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく及び被告馬やどの負担等は、次のようになる。
(1) 原告山洋食品
<1> 追加入店保証金 九〇四万二八〇〇円
<2> 支払期日及び額 平成四年九月三〇日及び平成六年三月三一日に各四五二万一四〇〇円
<3> 特別賃料月額 五万一一一六円
(他に消費税一五三三円)
<4> 平成六年四月分から平成七年四月分まで(一三か月分)の特別賃料の合計額
六八万四四三七円(消費税一万九九二九円を含む。)
(2) 原告北浦
<1> 追加入店保証金 一七一八万九四三〇円
<2> 支払期日及び額 平成四年九月三〇日及び平成六年三月三一日に各八五九万四七一五円
<3> 特別賃料月額 八万二七六八円
(他に消費税二四八三円)
<4> 平成六年四月分から平成七年一〇月分まで(ただし、平成六年五、六月分を除く一七か月)の特別賃料合計額
一四四万九二六七円(消費税四万二二一一円を含む。)
(3) 原告尾田
<1> 追加入店保証金 二一七〇万二七二〇円
<2> 支払期日及び額 平成四年九月三〇日及び平成六年三月三一日に各一〇八五万一三六〇円
<3> 特別賃料月額 一二万二六七八円
(他に消費税三六八〇円)
<4> 平成六年四月分から平成七年七月分まで(一六か月)の特別賃料合計額
二〇二万一七二八円(消費税五万八八八〇円を含む。)
なお、原告尾田は、平成四年九月三〇日、被告会社に対し、追加入店保証金一〇八五万一三六〇円を支払った。
(4) 原告美喜食品
<1> 追加入店保証金 一〇九五万五七〇〇円
<2> 支払期日及び額 平成四年九月三〇日及び平成六年三月三一日に各五四七万七八五〇円
<3> 特別賃料月額 六万一九二九円
(他に消費税一八五七円)
<4> 平成六年四月分から平成七年七月分まで(一六か月)の特別賃料合計額
一〇二万〇五七六円(消費税二万九七一二円を含む。)
(5) 原告おたふく
<1> 追加入店保証金 一〇六〇万七九〇〇円
<2> 支払期日及び額 平成四年九月三〇日及び平成六年三月三一日に各五三〇万三九五〇円
<3> 特別賃料月額 五万九九六三円
(他に消費税一七九八円)
<4> 平成六年四月分から平成七年七月分まで(ただし、平成六年六、九月分を除く一四か月)の特別賃料合計額
八六万四六五四円(消費税二万五一七二円を含む。)
なお、原告おたふくは、被告会社に対し、平成六年六月分及び同年九月分の特別賃料として、それぞれ五万九九六三円、合計一一万九九二六円を既に支払った。
(6) 被告馬やど
<1> 追加入店保証金 三五〇五万八二四〇円
<2> 支払期日及び額 平成四年九月三〇日及び平成六年三月三一日に各一七五二万九一二〇円
<3> 特別賃料月額 一九万八一七二円
(他に消費税五九四五円)
<4> 平成六年四月分から平成七年四月分まで(一三か月)の特別賃料合計額
二六五万三五二一円(消費税七万七二八五円を含む。)
二 争点
1 出訴期間について
(一) 被告組合の本案前の主張
原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品及び原告おたふくが本件総会決議の無効確認を求める訴えは、定款違反を理由とするものであるから、総会決議取消しの訴えと解すべきであり、商店街振興組合法六五条、商法二四七条一項二号、二四八条一項により、総会決議がなされた日から三か月以内に訴訟を提起しなければならないところ、右訴えは、この期間が遵守されていないから不適法である。
(二) 原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品及び原告おたふくの主張
右原告らは、本件総会決議が単に定款違反を理由として無効であると主張しているのではなく、本件改装事業が被告組合の権利能力の範囲外であることを理由として無効であると主張しているのであって、本件総会決議の取消しを求めているわけではない。
2 本件改装事業は、商店街振興組合法一三条又は被告組合の定款七条所定の事業に含まれないか。そのため、本件総会決議は無効となるか。
(一) 原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品及び原告おたふくの主張
被告組合の行う事業は被告組合の定款七条に規定されているところ、本件改装事業は、同条所定の事業のいずれにも該当しない。また、右事業は虹のまち地下街の店舗の所有者・賃貸人である被告会社がその自己資金で実施すべきものであるにもかかわらず、本件総会決議は、巨額の資金負担を組合員に負わせるものであって、被告組合の定款一条にいう「組合員の事業の健全な発展に寄与」するものとはいえない。したがって、本件改装事業を行うことは、被告組合の権利能力の範囲外であり、これに関する本件総会決議は無効である。
(二) 被告馬やどの主張
本件改装事業は商店街振興組合法一三条所定の事業及び被告組合の定款七条所定の事業のいずれにもあたらないから、本件総会決議は無効である。
(三) 被告エーワンベーカリー及び被告長谷川の主張
商店街振興組合法一三条は、組合に許される行為を制限列挙したものである。
被告組合は、組合員から事前積立賦課金を徴収した上で、虹のまち地下街の通路部分の床、壁、天井等を補修する本件改装事業を行うが、その部分の所有権は、附合により地下街の設備の所有者である被告会社に帰属する。しかし、その対価が被告会社から被告組合に対して支払われることはない。そうすると、本件改装事業に対する資金の拠出は、実質的に被告会社に対する多額の贈与となるが、このような行為は商店街振興組合法一三条に規定されていない。
また、本件改装事業は、被告組合の定款七条のいずれの事業にも該当せず、被告組合の目的とは無関係の事業である。定款には、本件のような大規模な改装事業は記載されておらず、被告組合の設立時から、本件地下街の改装は予定されていなかったというべきである。
商店街振興組合法四条二項によれば、組合は組合員又は会員に直接の奉仕をすることを目的とし、特定の組合員又は会員の利益のみを目的としてその事業を行ってはならないのであり、たとえ、組合員に対する奉仕であっても、一部の者が相対的に不利益になることは許されないのであるから、第三者である被告会社に奉仕し、利益を与えることで、組合員が不利益を被るような事業を行うことは許されない。
したがって、本件改装事業は、被告組合の行為能力の範囲外であり、これに関する本件総会決議は無効である。
(四) 被告組合の主張
(1) 本件改装事業は、商店街振興組合法一三条所定の事業に含まれ、被告組合の定款七条三号及び一〇号所定の事業にあたる。
右法律及び定款によると、被告組合は、一般公衆の利便を図る施設を設置することができ、被告組合が本件改装事業を実施し、費用を負担することは許される。右事業の実施に関し、施設の所有権が被告組合に帰属するか否かと右事業の許否とは無関係である。
(2) 虹のまち地下街は、昭和四五年に開設された後、二〇年以上の長期にわたり、本格的な改装事業は行われず、本件改装事業より前には施設の老朽化と陳腐化が進んでいた。一方、大阪市内各地に多数の近代的地下街が設置されるとともに、周辺商業地域の近代化と高度化が進み、虹のまち地下街全体の集客力の低下が懸念される状況となった。これに加え、関西国際空港の開港により、これに地理的に近接するミナミ地域が国際化していくことが必至となった。このため、ミナミ地域に位置する虹のまち地下街も、そのイメージを刷新する必要が生じ、被告組合は、組合員全体の商業力の強化と店舗経営の発展、安定を図るため、本件改装事業を計画した。
商店街振興組合は、商店街を形成する多数の店舗経営者を組合員とする団体であり、各組合員自体は、資本力のない中小店舗である。このような中小店舗が個別に設備投資をして各店舗の近代化を図っても、商店街全体の高度化が図られなければ、集客力の強化にはつながらず、他の大規模店舗や近代的商店街との競争に敗れて、商店街全体の衰退をもたらすこととなる。そこで、商店街を構成する店舗が集合体となり、大資本と対等に経営の合理化を図ることに商店街振興組合法の目的がある。
本件改装事業は、施設の老朽化に対応したものであり、組合員の経営の安定に資する目的で計画されたものである以上、それだけで、被告組合の定款に定められた目的に合致するというべきである。
(五) 被告会社の主張
本件改装事業は、虹のまち地下街を改装するため、個々に店舗を構える者で構成される被告組合と、所有者兼賃貸人の被告会社が一体として行った共同事業である。
その目的は、地域内の環境の整備改善を図り、組合員の事業の健全な発展に寄与することにあり、かつ、地下商店街の建設・整備は、地上交通の緩和を目的とした公共性の高いものであるから、公共の福祉の増進に資するものである。
また、本件改装事業は、被告組合の定款七条所定の個別事業を実施するにあたり、その前提となり、また基盤をなすものであって、虹のまち地下街の存立そのものにかかわる事業であり、同条に規定されているか否かを問わない性質のものであるが、あえて同条各号の中にその根拠を求めるとすれば一〇号、一二号である。
3 本件総会決議は、組合員有限責任の原則に反し、総会決議権の範囲を逸脱したものとして無効か。
(一) 原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品及び原告おたふくの主張
商店街振興組合が総会で決定することができる事項は無制限ではなく、組合員個人の財産拠出に関しては、組合の運営に必要な経費に充てるための会費等の拠出に限られる。
(二) 被告エーワンベーカリー及び被告長谷川の主張
商店街振興組合法二〇条四項は、組合員有限責任の原則を規定し、組合員は、組合との契約によって定められた限度でのみ、組合に対し責任を負うにとどまる。
もっとも、これは、被告組合に対する追加出資を禁ずるにとどまり、組合員は、被告組合に対し、経費の負担をすることは妨げない。そこで、経費と出資の区別が問題となるが、被告組合の短期的な収入となるにすぎないものを経費とし、長期的資金・設備資金等長期にわたり利用し、構成員に返還することが予定されていないものを出資と解すべきである。
ところで、本件改装事業において、地下公共道路の工事について内装等は全て被告組合や各組合員が負担することとなっている。そうすると、事前積立賦課金は、被告組合の活動に必要な費用の支払ではなく、長期にわたり利用され、返還を予定されていない出資の性質を有し、組合員に対し追加出資を求めるものであり、被告組合の定款一二条所定の経費にはあたらないというべきである。
(三) 被告組合の主張
事前積立賦課金は、総会決議で徴収することを決めた経費である。その根拠は被告組合の定款一二条に求められる。
出資と経費の区別については、次のように解すべきである。すなわち、組合が行う事業が経済事業(取引的行為)の場合、それ自体が収益を予定した事業であり、基本的には出資金あるいは借入金をもって運営されるべきである。したがって、経済情勢の悪化や経営判断の誤りによって損失が発生した場合、その損失の分担を個々の組合員に求めることは、有限責任の原則に違反する。これに対し、非経済的事業の場合、事業自体から直接収益をあげることはできないのであるから、その支出につき、経費として、組合員に対し負担を求めることは許されるというべきである。
4 本件総会決議は、公序良俗に反し又は決議権の濫用として無効か。
(一) 原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品及び原告おたふくの主張
(1) 本件総会決議に反対した組合員は、自己の意思によらずに、何の権利取得も補償もないまま、重大な財産拠出義務を負わされることになるが、これは私的自治の原則に反し、契約の自由を侵害するものであって、公序良俗違反である。
しかも、本件改装事業に伴い、組合員は、それぞれ自己の営業する店舗の改装の必要に迫られることになり、そのために更に費用の支出を要することになる。
総会決議によって組合員が一定の負担を負う場合があることは否定できないが、その場合も、負担の目的、内容及び限度が問題となりうる。右原告らを含む組合員にとって、本件総会決議による負担は過大であり、その支払義務が本人の承諾なく一方的に課されるということは許されない。
本件改装事業の公共性を強調するのであれば、公的な団体が資金を負担すべきであり、被告会社が大阪市の出資により設立されたことからすると、被告会社こそがその費用を負担すべきであって、右原告らに対してその承諾もないのに負担させることは許されないというべきである。
(2) 本件改装事業は、本来、虹のまち地下街の所有者である被告会社が自己の費用負担のもとに実施すべきであるにもかかわらず、被告会社は、自ら費用を負担することなく本件改装事業を行い、中小零細の店舗を経営する組合員を虹のまち地下街から追い出すことを企図した。被告組合の執行部は被告会社の意を受け、本件改装事業につき、特に組合員個人の費用負担額について組合員に十分な説明をせず、本件総会決議を成立させた。このように、組合員の利益を顧みず、被告会社の意向を受けた一部の者により仕組まれて成立した本件総会決議は、総会決議権を濫用して行われたものであり、無効である。
(二) 被告エーワンベーカリー及び被告長谷川の主張
本件改装事業の結果、地下街の通行人の量が多少増えたとしても、これによる組合員の大きな負担に見合うだけの売上増は見込めない。実際、被告エーワンベーカリーミナミ店は、改装工事の前後を通じて、その売上げが増加しないばかりか、むしろ改装後に売上げが落ちている。このような売上げの低落傾向は、被告エーワンベーカリーのみならず、被告組合全体について見られることであり、大部分の組合員の営業は成り立たない。実質的にも、被告組合及び被告会社による本件請求は、本件改装事業の費用を、被告組合ひいては組合員の負担に転嫁しようとするものであるところ、本来、虹のまち地下街の所有者である被告会社が負担することこそふさわしいし、また、虹のまち地下街の通路部分は、主として歩行者用道路としての機能を有し、実際にも多数の一般市民が通行している利用状況に照らすと、本来は、地方公共団体が税金により維持管理すべきものであって、この点を考えると、組合員が本件改装事業の費用を負担するのは不当である。したがって、本件総会決議は、総会決議権を濫用したものであり、これに基づいて事前積立賦課金を徴収することは許されない。
なお、裁判所は、被告組合がした経営判断の当否についても判断をすることができるというべきである。
(三) 被告組合の主張
(1) 本件改装事業を行う必要があった点については、前記2(四)(2)のとおりである。
地下商店街という特殊な集積空間を共同で利用して営業する組合員が、大多数の組合員の意思と利益及び適法に形成された組合総会の意思決定に拘束されるのは、それが一定の経済的出捐を伴う場合であっても当然である。
(2) 本件総会決議による組合員の負担は、一概に重いとはいえない。本件賃借人ら以外の組合員が賦課金を支払いながら十分に経営を継続していることからしても、その負担は決して過大ではない。また、本件改装事業を実施したことにより、虹のまち地下街の集客力が増強されたことも過小評価すべきではない。
(3) 地下街の改装事業を行うか否か、行うとしてどのような規模、方法で行うかの判断は、高度な運営政策上の問題であって、それは、組合の自立的意思決定に委ねられるべき事柄であり、その自立的意思決定をしたのが本件総会決議である。裁判所は、総会における自立的意思決定が、手続上の準則に従って行われたか否かの判断のみをすべきであり、本件改装事業を実施すべきであったか否かにまで立ち入って、経営政策的判断をすべきではない。
負担の過大さが総会決議の無効事由となるとすれば、それは、全組合員にとって著しく過大か否かの問題であって、経営能力その他組合員の個別的な事情により、負担が過大となるか否かは、本件総会決議の効力とは無関係である。
しかも、被告組合及び被告会社は、本件改装事業について、組合員に対し、広報活動を通じて十分な説明を行った。
(四) 被告会社の主張
(1) 本件総会決議が適法に成立している以上、これに従って組合員に負担が課せられるのは当然である。本件総会決議は、内容の点でも公序良俗に反し又は権利の濫用となるようなものではない。
本件総会決議に関しては、昭和六三年八月から、被告組合及び被告会社において調査・研究・検討が行われ、平成元年五月の被告組合の総会において虹のまち改装決議がされており、その後、本件総会決議に至るまでの間も、各組合員に対し、被告組合及び被告会社から、文書配布等による広報活動や説明会の開催等がされてきた。
(2) 組合員は店舗で営業する者であり、組合員にとって本件総会決議による負担が一概に過大な負担ということはできず、支払時期や金額の決定も組合員に過大な負担を課すこととならないよう配慮されているし、追加入店保証金の一部が退店時に返還されることなどに照らし、本件総会決議による負担が過大であるとはいえない。
また、本件改装事業のうち、被告組合の実施部分については、被告組合の資産に計上されるから、何の権利取得もないとはいえない。
(3) 虹のまち地下街の改装事業を行う必要性については、被告組合の主張のとおりである。本件改装事業の実施主体につき、被告会社が全てを実施することも考えられたが、特定共同施設事業の対象部分については、被告組合が主体となって、高度化資金を利用する方が事業費の借入金の金利負担が軽減されることから、被告組合と被告会社との協議の上、特定共同施設事業と施設改善事業の二つに分け、前者を被告組合が、後者を被告会社がそれぞれ実施するものとしたのであり、本件改装事業を被告組合と被告会社の共同事業としたことは、総組合員にとって有利になっている。
被告会社は不動産賃貸事業を営む会社であるから、改装事業の事業費は、保証金や賃料の増額等によって、最終的には賃借人の負担に帰するところとなるが、右の方法により本件改装事業の一部を被告組合が実施することにより、借入金の利息の負担が軽減され、結局組合員の負担を軽減することとなった。
地下商店街の建設・整備は、地上交通の緩和を目的とした公共性の高いものではあるが、このことと地下街の改装事業費を誰が負担するかということは別の問題である。地下街のイメージアップにより集客力を高めるという目的は、究極的には組合員の事業経営に資するという商業的な効果がもたらされるのであるから、賃貸施設に関する改装事業費が賃借人に転嫁されるのは当然である。
そして、被告組合及び被告会社が本件改装事業について組合員に対して十分な説明を行ったことは被告組合の主張のとおりである。
5 本件総会決議により賃貸借契約における賃借人の負担内容が変更されるか否か(追加入店保証金債権及び特別賃料債権の成否)。
(一) 原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく及び被告馬やどの主張
虹のまち地下街の、右原、被告六名が営業する店舗の賃貸借契約は、被告会社と右六名との間で締結されており、被告組合は、賃貸借契約の当事者ではない。したがって、いかに被告組合が本件総会決議をしようとも、右六名と被告会社との間で個別的合意なくして賃貸借契約の内容が変更されることはない。
なお、被告会社が後記(二)(1)、(2)で主張している賃貸借契約六条、二九条は、賃借人に極めて不利な規定であり、借地借家法三〇条の趣旨に反し、無効である。また、被告会社が同(3)で主張するような慣習法又は事実たる慣習は存在しないし、仮にそのような慣習が存在するとしても、公序良俗に反し、法的効力はなく、また、追加入店保証金及び特別賃料は、特別な負担金であるから、通常の賃料改定の方法で処理することはできないというべきである。
(二) 被告会社の主張
虹のまち地下街の賃借人は、被告会社との賃貸借契約上、被告組合への加入が義務づけられており、実際、賃借人全員が被告組合に加入しているところ、本件総会決議は、右組合員の意見を聴取しながら、被告会社と被告組合が共同して調査、検討した上で策定されたものである。そして、本件改装事業は、虹のまち地下街の全面改装事業であり、虹のまち地下街の賃借人である組合員全員の利害に関することであって、被告組合が主体の特定共同施設事業と被告会社が主体の施設改善事業とが一体として実施されるものである。
このような事情を考慮すると、右賃貸借契約における賃借人としての負担内容は、被告会社が本件総会決議に基づいて組合員に対し追加入店保証金及び特別賃料を請求すれば、その個別的な承諾がなくても、変更の効力を生じるというべきである(なお、被告会社は、各組合員の追加入店保証金及び特別賃料の金額を明確にするため、本件総会決議後、組合員との間で、順次、負担内容の変更に関する覚書を締結してきたが、仮に組合員がこれに応じない場合でも、被告会社の請求があれば当然に負担内容は変更されるというべきである。)。その具体的な根拠は、次のとおりである。
(1) 賃貸借契約二九条
被告会社と、虹のまち地下街の店舗の賃借人との間の賃貸借契約では、賃貸借期間中、被告会社が必要と認めるときは、当該契約の条項を改定することができ、賃借人が被告会社から改定の申入れを受けた場合、著しく不当でない限りこれを拒むことはできない旨の規定がある(同契約二九条)。
本件総会決議で承認された、賃借人が追加入店保証金及び特別賃料を支払うとの賃貸借契約の改定は、本件改装事業が虹のまち地下街全体のイメージアップを図り、その集客力を増大することを目的とし、最終的には賃借人に転嫁されるべき事業費の借入れにかかる金利負担を軽減するために中小小売商業振興法に基づく高度化事業計画として大阪府の認定を受けたこと、本件改装事業により集客力が増加すれば、結局は賃借人の利益に帰すること、さらに、賃借人の負担額、支払方法の点や保証金の一部が退店時に返還されることなどに照らすと、著しく不当なものとはいえない。
そして、被告会社が賃借人に対し、右契約条項に基づいて、契約改定を申し入れた場合、契約改定の効果は、賃借人による承諾の意思表示又はこれに代わる裁判がなくとも生じるのであり、この意味で、被告会社の右条項に基づく契約改定請求権は形成権である。したがって、賃貸借契約二九条により、被告会社が申入れさえすれば、賃借人との間の契約の内容について変更の効力が生ずる。
被告会社は、本件賃借人らに対し、本件総会決議に基づいて負担条件の変更について覚書の締結を求めたのであり、これは、契約改定の申入れにあたるというべきである。
(2) 賃貸借契約六条及び附属協定四条
被告会社と虹のまち地下街の店舗の賃借人との間の賃貸借契約には、賃借人は、賃料のほか、施設の改善並びに地下商店街の特質上要する保全及び管理に要する経費を被告会社のした計算に基づいて負担するものとし、被告会社から請求を受けた場合には五日以内にその金額を被告会社の本社又はその指定人に支払わなければならないとの規定(同契約六条一項)がある。また、右賃貸借契約の附属協定には、被告会社所有の建物又は設備が時代の推移により地下商店街として著しくふさわしくない状態になり、現状を変更しなければならなくなったときは、被告会社と賃借人の協議の上、被告会社が工事を行うものとし、これに要する経費の負担については、被告会社と賃借人は誠意をもって協議するとの規定(附属協定四条(七)(4))がある。
ところで、賃借人は被告会社との賃貸借契約において被告組合に加入することを義務づけられていること、被告組合の総会において組合員(賃借人)が被告会社に対して本件改装事業費を負担することを承認する本件総会決議がされたこと、その負担内容は、被告会社と被告組合の協議を経ているだけでなく、その協議の経過は、組合員である賃借人に逐次周知されており、賃借人との協議が尽くされたものといえること、本件改装事業は虹のまち地下街全体を対象とし、被告会社と被告組合の共同事業であることなどの諸事情を考慮すると、総会における、被告会社に対する負担を承認した決議をもって、決議に反対した者も含めて全賃借人の承諾に代えることができると解すべきであるから、本件賃借人らは、賃貸借契約六条及び附属協定四条により、追加入店保証金及び特別賃料の支払義務を負うというべきである。
(3) 慣習法又は事実たる慣習の存在
被告会社と被告組合との間で、本件総会決議の後、前記のとおり、賃借人の負担内容についての合意が成立した。この合意は、臨時総会での決議に基づき、その範囲内で行われた。
被告会社と賃借人との間では、賃貸借契約の内容変更について、被告会社と被告組合との間の合意の効力が被告会社と個々の賃借人との間の契約関係に及ぶとする商慣習法又は事実たる慣習が存在する。従来の賃料改定の方法もそのような慣習の存在を裏付けるものであって、賃借人が被告会社と被告組合が合意した改定内容に応じなかった例はない。
したがって、被告組合の構成員である賃借人は、被告会社と被告組合との間の合意に拘束されるというべきである。
(4) 労働組合法一六条又は同条の立法趣旨の類推
被告組合は、賃借人(組合員)全員の利益代表である。本件改装工事のように、組合員全員の利害に関わる事項については、被告会社が賃借人全員と個々に交渉して合意するのではなく、その利益代表と交渉し、合意することが必要かつ合理的である。
労働組合法一六条は労働協約に規範的効力を認め、一定の場合には、労働協約の効力が使用者と個々の組合員との間の契約関係に及ぶものとしているが、その趣旨は、労働協約に慣習法又は部分社会における自主法として法規範性が認められるからである。この趣旨は、被告組合と被告会社とが合意をした場合、その合意が被告会社と組合員との間の賃貸借契約に及ぼす効果についても妥当するというべきである。
(5) 不当利得返還の法理
原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく及び被告馬やどは、虹のまち地下街の改装の完了後、追加入店保証金と特別賃料の全部又は一部を支払っていないにもかかわらず、費用負担に応じた他の大多数の賃借人らと同様に、本件改装事業による利益を享受している。このように、右六名は、他の賃借人らとの衡平の観点からみて、著しく不当な利益を得ているのであるから、悪意の受益者として、追加入店保証金及び特別賃料の支払義務(又はこれと同額の不当利得返還義務)を負うというべきである。
(6) 第三者のためにする契約(民法五三七条)
本件改装事業が被告組合と被告会社の共同事業であること、虹のまち地下街の店舗の賃借人が被告会社との賃貸借契約において被告組合に加入することが義務づけられていることからすると、民法五三七条の趣旨に照らし、右賃借人は、本件総会決議で追加入店保証金及び特別賃料の支払が承認、可決されたことにより、被告会社に対し右支払義務を負担したものというべきである。
(7) 信義則上の義務
本件改装事業が被告会社と被告組合の共同事業であること、組合員の負担内容が被告組合の臨時総会決議を経ていることから、賃借人は被告組合に対し、決議に従って右負担を履行する義務があること、賃借人は被告会社との賃貸借契約において、被告組合に加入することが義務づけられていることから、賃借人が被告組合の総会決議に従うことは賃貸借契約上の義務でもあること、右負担を履行しない賃借人も本件改装事業による種々の便益を現実に享受しているのであるから、賃借人に被告会社に対する右負担の履行義務がないとすると、これを履行した賃借人との衡平を失することなどの諸点を考慮すれば、原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく及び被告馬やどは、被告会社に対し、信義則上、追加入店保証金及び特別賃料を支払う義務があるというべきである。
6 原告尾田が被告会社との間でなした追加入店保証金及び特別賃料を負担する旨の合意は錯誤によるものか。
(一) 原告尾田の主張
原告尾田は、平成四年九月一七日、被告会社との間で、追加入店保証金及び特別賃料を負担することを書面(覚書)により合意したが(争いがない。)、これは、本件総会決議が有効であると誤信した錯誤に基づくものであり、右合意は無効である。
(二) 被告会社の主張
本件総会決議は有効であり、右合意も有効である。
7 被告長谷川の事前積立賦課金の支払義務の存否及び額
(一) 被告組合の主張
被告長谷川は、被告会社との交渉の結果、委託直営契約の締結を拒否し、七九・二平方メートルの店舗について賃貸借契約を締結した。その店舗面積に応じて平成三年八月分から平成五年一月分までの事前積立賦課金の額を算定すると、六五〇万九四四八円となる。
(二) 被告長谷川の主張
被告長谷川は、本件改装事業後、従来の賃貸借契約及び委託直営契約の店舗計二軒を一体化して営業しているが、この新店舗の営業形態に関し、被告会社との間で、賃貸借契約を締結するのか、直営方式とするのかについて合意が未だ成立していないから、被告長谷川には事前積立賦課金の支払義務はない。また、店舗の面積は、七九・二平方メートルではない。
第四 争点に対する判断
一 争点1(出訴期間)について
1 商店街振興組合の総会決議の瑕疵を争うにあたっては、商店街振興組合法六五条により商法二四七条ないし二五二条が準用されるから、総会決議の内容が定款に違反することを理由とするときには総会決議取消しの訴えによるべきであり、この場合には総会決議の日から三か月以内に訴えを提起することが必要である。しかし、総会決議の内容が法令に違反することを理由とするときには総会決議無効確認の訴えによるべきであり、この場合には総会決議取消しの訴えのような出訴期間の制限はない。
2 前記第三の一の事実によると、本件総会決議は、平成三年三月二二日になされたものであるところ、原告山洋食品及び原告北浦の本件総会決議無効確認の訴えが平成四年一一月二七日に、原告尾田、原告美喜食品及び原告おたふくの同無効確認の訴えが平成七年四月二七日にそれぞれ提起されたことは、当裁判所に顕著である。そうすると、右各訴えは、本件総会決議の日から三か月を超える期間が経過した後に提起されたことが明らかである。
しかし、右各訴えが商店街振興組合法一条、一三条、二〇条四項、民法一条三項、四三条、九〇条等の法律違反を理由としていることは、その主張から明らかであるから、この点に関する被告組合の主張は理由がないといわなければならない。
二 争点2(本件改装事業は商店街振興組合法一三条又は被告組合の定款七条所定の事業に含まれないか。そのため、本件総会決議は無効となるか。)について
1 商店街振興組合法一三条は商店街振興組合が行うことのできる事業を規定しており、これによると、商店街振興組合は、販売、購買、保管、運送、検査その他組合員の事業に関する共同施設(一号)、組合員及びその従業員の福利厚生に関する施設(四号)、街路灯、アーケード、駐車場、物品預り所、休憩所等組合員及び一般公衆の利便を図るための施設(八号)、その他同条所定の事業及びこれに附帯する事業(一一号)を行うことができる。そして、被告組合の定款では、前記(別紙)のとおり、その目的と事業内容を規定している。
2 前記第三の一の事実、《証拠略》によると、虹のまち地下街は、昭和四五年三月に第一期工事が、昭和四六年一二月に第二期工事がそれぞれ竣工し、そのころ営業を開始したが、右工事以降本件改装事業までの間に本格的な改装工事は行われないまま、二〇年ほどの年月が経過し、施設の老朽化と商店としてのイメージの陳腐化が顕著となり、商店街としての集客力が減少したため、改装の必要性が高まっていたこと、本件改装事業は、このような状況を改善し、商店街全体の店舗経営の安定、発展を図るため計画されたものであること、虹のまち地下街は、地下鉄四つ橋線及び千日前線の難波駅、地下鉄千日前線、堺筋線及び近鉄線の日本橋駅並びに地下鉄御堂筋線及び近鉄線の難波駅に接続し、また、階段を通じて地上道路に接続する東西二本の公共用地下通路に面して組合員の営業する店舗が配置される形で構成されており、右公共用道路と店舗とは構造上一体化していること、公共用通路の一部は広場となっていること、本件改装事業のうち、被告組合の行う特定共同施設事業は、公共用通路の床面、壁面、天井及び照明の各工事、階段及び上屋工事、公共広場工事、公衆トイレ、サイン、情報機器等の整備を内容とするものであり、既設の設備を撤去した上、それを新設する工事等が実施されたこと、虹のまち地下街の店舗その他の設備は、被告会社が所有していること、以上の事実が認められる。
3 右2の事実によると、虹のまち地下街において、公共用通路は、組合員の営業する店舗と構造上一体化しており、かつ、公共用通路、階段、照明、上屋、公共広場、公衆トイレ、サイン、情報機器及びこれらの工事は、一般公衆の利便を図るための施設及び事業ということができ、照明は街路灯に、公共広場は休憩所に該当するから、それらの整備は、商店街振興組合法一三条八号、一一号及び被告組合の定款七条一〇号、一二号所定の事業にあたるということができる。また、本件改装事業が虹のまち地下街の施設を更新し、商店街のイメージの向上を図ることにより、全体としての集客力を増強することを目的としていることに照らすと、組合員の事業の健全な発展に寄与するという被告組合の目的にもかなうものということができる。そして、ある事業が右所定の事業の範囲に含まれるかどうかの判断は、客観的見地からこれを行うべきであるから、本件改装事業の対象となる設備の所有権が被告組合に帰属しないことや、本件賃借人らが経済的負担をすることの当否は、その判断を左右するものではない。
三 争点3(本件総会決議は、組合員有限責任の原則に反し、総会決議権の範囲を逸脱したものとして無効か。)について
1 商店街振興組合法二二条一項では、組合は、定款で定めるところにより、組合員に経費を賦課することができる旨を規定しており、被告組合の定款においても、経費の賦課について、前記(別紙)のとおり規定している。そして、本件改装事業に関する費用の額、その徴収の時期及び方法は、本件総会決議及び同決議において細目の決定を一任された被告組合理事会において決定されたことは前記のとおりである。
2 ところで、商店街振興組合法二〇条四項では、組合員の責任は、その出資額を限度とする旨規定し、いわゆる有限責任の原則を定めているので、被告組合による本件改装事業に関する経費の賦課がこの原則に反しないかが問題となる。
しかし、被告組合の定款上、経費を賦課することができる事業については、「その行なう事業の費用にあてるため」と規定するだけで、それ以上に格別限定が付されておらず、また、本件改装事業は、虹のまち地下街の店舗と一体をなす公共用通路部分の改装という設備の改善を目的とするものであり、性質上、それ自体が直接的に被告組合に経済的収益をもたらすものではなく、そこから費用を捻出することができないという点をも併せ考えると、本件改装事業に要する費用について、経費として組合員に対して負担を求めることが有限責任の原則に反するということはできない。
四 争点4(本件総会決議は、公序良俗に反し又は決議権の濫用として無効か。)について
1 被告組合の総会の議事は、総組合員の半数以上が出席し、定款に特別の定めがない限り、出席者の過半数で決するものであることは前記のとおりであり、これによると、被告組合の意思決定には多数決原理が妥当するのであって、組合員が被告組合の一員として行動するときに、団体としての意思決定により、当該組合員の意思に反して、義務が課される場合があるとしても、そのことをもって、私的自治ないし契約自由の原則、ひいては公序良俗に反するものであるとはいえないし、決議権の濫用にあたるともいえない。
2 また、被告組合の定款記載のとおり、被告組合への加入は自由意思によるものであり、組合員は被告組合に対しあらかじめ通知をすれば事業年度末に脱退することができること、組合員は虹のまち地下街で店舗を構えて営業する者であることからすると、被告組合が、その総会において、組合員に対して経済的負担を課す決議を行ったとしても、それが一部の組合員に対してのみ著しく過重な負担を課すものでない限り、公序良俗違反又は決議権の濫用の問題は生じないといわなければならない。組合員に対して右決議に基づく経済的負担を課した場合、仮に組合員の中にその負担が過大であると考える者がいたとしても、それは、組合員の資力、従前の経営状況、経営能力等という、総会決議の内容とは直接関係のない個別的事情によるものであって、右決議の効力を左右するものではない。そして、前記第三の一の事実によると、本件総会決議による賦課金の額と特別賃料の額は店舗面積に応じて算定され、追加入店保証金の額は営業種別により二種類に分けられ、店舗面積に応じて算定されるのであるから、この決議が一部の組合員に対してのみ過重な負担を課すものでないことは明らかである。したがって、この点においても、本件総会決議が公序良俗に反し又は決議権の濫用にあたるということはできない。
3 被告会社が本件改装事業につき費用の一部の負担をしたことは前記のとおりであり、他方、被告組合が本件賃借人らやその他特定の組合員を追い出す目的で本件総会決議をしたとの事実は、本件全証拠によっても認められない。また、被告会社は、地下街の店舗の賃貸等を業とするものであるから、被告会社が本件改装事業の費用全部を負担したとしても、それは賃料の増額等により、いずれは賃借人である組合員の負担に転嫁されることになるし、被告会社が改装資金を借り入れた場合に生ずる金利についても賃借人に転嫁されることになる。以上の点や、被告組合が高度化資金の借入れを受ければ、金利の負担なく資金調達することが可能となり、賃借人の負担が軽減されることをも併せ考えると、本件総会決議が決議権の濫用にあたるとはいえないし、本件において他に決議権の濫用と目すべき事情も見当たらない。
五 争点5(本件総会決議により賃貸借契約における賃借人の負担内容は変更されるか否か。)について
1 前記第三の一の事実及び《証拠略》によると、本件賃借人らの店舗を目的とする賃貸借契約は、本件賃借人らと被告会社との間で締結されていること、被告組合は、賃貸借契約上、賃借人が加入することを義務づけられた組織であるが、賃貸借契約の当事者ではないこと、被告組合は、本件総会決議において、本件賃借人らを含む賃借人(組合員)と被告会社との間の賃貸借契約に関し、新たに追加入店保証金及び特別賃料の支払義務を負担するものとしたこと、以上の事実が認められる。
ところで、本件総会決議は、被告会社と組合員との間の賃貸借契約の内容を変更するものであるが、契約内容を変更するには、当該契約に特段の定めがある場合は別として、契約当事者の合意が必要である。しかるに、被告組合は、被告会社との賃貸借契約の当事者ではないから、本件総会決議には個別の契約内容を変更する効力はないのが原則である。
しかし、被告会社は、賃借人との個別の合意がなくとも、本件総会決議により契約内容が変更され、賃借人には被告会社に対して本件総会決議の内容に従って追加入店保証金及び特別賃料の支払義務が生じていると主張しているので、以下においてその当否を検討する。
2(一) 賃貸借契約二九条により、被告会社が申入れさえすれば、本件賃借人らとの間の賃貸借契約の内容の変更の効力が生ずるとの被告会社の主張について
《証拠略》によると、本件賃借人らと被告会社の間の賃貸借契約二九条には、契約期間中において、被告会社が必要と認めるときは、この契約の条項を改定することができ、賃借人は被告会社から改定の申入れを受けた場合、著しく不当でない限りこれを拒むことはできない旨規定されていることが認められる。
しかし、契約内容の変更は当事者の合意により行われるのが原則であることはいうまでもなく、当事者の一方的意思表示によりその者に有利な効果が生じるのは例外に属するのであるから、法律上又は契約上、そのような効果を付与する旨の規定がない限りそのような効果は認められないというべきであるし、契約条項の解釈にあたっても、その趣旨は尊重されるべきである。この見地から、右賃貸借契約二九条をみると、同条の「拒むことはできない」との文言は、承諾したものとみなされるという趣旨に解することは到底できないのであって、同条が被告会社の申入れにより直ちに契約改定の効果が生じる旨の規定であると解することはできない。
(二) 賃貸借契約六条及び附属協定四条により、被告会社が請求しさえすれば、本件賃借人らに経費負担義務が生じるとの被告会社の主張について
《証拠略》によると、被告会社と本件賃借人らとの間の賃貸借契約六条には、賃借人は賃料の他、施設の改善並びに地下商店街の特質上要する保全及び管理に要する経費その他の費用を被告会社のした計算に基づいて負担するものとし、被告会社から請求を受けた場合には、五日以内にこれを支払わなければならない旨(同条一項)、右の賃借人の負担すべき経費の基準については、同契約の附属協定に定めるとおりであることを賃借人は承諾する旨(同条二項)が規定されていること、これを受けて、被告会社と賃借人との間の賃貸借契約附属協定四条(七)(4)には、被告会社所有の建物又は設備が時代の推移により地下商店街として著しくふさわしくない状態になり、現状を変更しなければならなくなったときは、被告会社と賃借人による協議の上、被告会社が改良工事を行うものとし、これに要する経費の負担については、被告会社と賃借人は誠意をもって協議する旨規定されていること、以上の事実を認めることができる。
ところで、法律上又は契約上、当事者の一方的意思表示により相手方の合意なくしてその者に有利な効果を付与する旨の規定がない限り、そのような効果は認められないというべきであり、契約条項の解釈にあたっても、その趣旨は尊重されるべきであることは、右(一)と同様である。右賃貸借契約六条二項に基づく右附属協定(七)(4)では、その文言からすると、時代の推移により地下街が老朽化した場合に現状変更を行う可能性があることは、契約当初から予定されていたといえるけれども、その場合に要する費用を被告会社と賃借人との間でどのように負担するかについては、当然に賃借人の負担とされているわけではなく、両者の協議によるものとされているのであるから、協議が整わない場合、賃借人の承諾がなくとも当然に経費の支払義務が生ずるものと解することはできない。したがって、賃貸借契約六条及び附属協定四条を根拠とする被告会社の主張も理由がない。
(三) 被告会社と被告組合とが賃貸借契約の内容変更についての合意をした場合、組合員である賃借人はこの合意に拘束されるとする慣習法又は事実たる慣習が存在するとの被告会社の主張について
(1) 《証拠略》によると、被告会社と賃借人との間の賃料値上げ及びその手続に関し、次の事実が認められる。
虹のまち地下街の店舗の賃料は、昭和四九年以来、概ね三年に一回程度、増額改定されてきた。被告会社が、賃料を増額改定しようとする場合、まず、全組合員(全賃借人)を対象に、賃料改定説明会を開催し、改定内容及び改定理由等を説明する。右の説明会終了に引き続いて、右会合を被告組合主催の店主会に切り替え、その後の被告会社との賃料改定交渉は各組合員が個別に行うのではなく被告組合の理事会又は正副理事長に任せるよう、被告会社が会合に参加した組合員から一任を取り付ける。被告組合は、被告会社との間で、賃料の増額率や賃料改定の実施時期等の賃料改定内容について交渉し、合意する。右合意を受けて、被告組合が、組合員全員に対し、被告会社との交渉経過及びそこで合意した賃料改定内容を報告し、その後、被告会社は、組合員全員に対し、被告組合との合意に基づいて算出された個々の組合員の改定後の賃料額及び賃料増額の実施時期を通知する書面を送付する。被告会社は、右通知書面を送付する際に、賃料改定書と題する書面を二通同封し、組合員に対し、右二通の賃料改定書に押印した上、返送することを求める。組合員が、右二通の賃料改定書に押印した上、これを被告会社に送付すると、被告会社は、そのうちの一通に記名押印して組合員に返送する。
(2) 右事実によると、従前の賃料増額改定に際しては、被告会社と被告組合との交渉、合意がなされた後に、被告会社が組合員に対して個別に賃料改定書の作成を求め、被告会社と個々の組合員との間で賃料改定書が取り交わされていたのであるから、被告会社、組合員のいずれも、被告会社と被告組合との合意のみによって賃料増額改定の効力が生じるとの認識を有していたとは考えられないところであり、被告会社と被告組合とが賃貸借契約の内容変更について合意をした場合、組合員である賃借人はこの合意に拘束されるとする事実たる慣習又は慣習法が存在するということは到底できない。
もっとも、被告会社は、賃借人が被告会社と被告組合が合意した改定内容に応じなかった例はないと主張しているが、このことによって被告会社主張のような事実たる慣習又は慣習法の存在を認めるとすれば、賃料の値上げに応じてきた賃借人は賃料値上げの申入れを拒否し得ないという極めて不当な結果となるのであって、そのような結論を是認することができないことは多言を要しない。
(四) 被告会社と被告組合とが、賃貸借契約の内容変更についての合意をした場合、労働組合法一六条又は同条の立法趣旨を類推することにより、組合員たる賃借人はこの合意に拘束されるとの被告会社の主張について
労働組合は、使用者に対して劣位にある労働者の地位を向上させるため、労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを目的として、自主的に結成される団体であり、労働組合には、憲法上、特に労働基本権が保障されている。労働組合法一六条は、かかる前提のもとに、労働組合と使用者との間で労使協約が締結され、所定の要件を満たす場合には、労働者と使用者との間の労働契約のうち、労働協約に定める労働条件その他の労働者の待遇に関する基準に違反する部分を無効とし、その無効部分と労働契約に定めのない部分については労働協約上の基準の定めるところによるものとするのであり、契約自由の原則に対する例外的規定である。
ところで、商店街振興組合は、商店街において小売商業又はサービス業等を営む者が協同して経済事業を行うとともに、地域の環境の整備改善を図るための事業を行うことを目的とするものであって(商店街振興組合法一条)、そもそも、労働組合のように対等な交渉を行うべき相手の存在が予想されていない。もっとも、被告組合は、被告会社の店舗賃借人により構成されているが、一般に、商店街振興組合が賃貸人との交渉を前提として構成された賃借人の団体としての性格を有するわけではないし、また、被告組合は、賃貸人である被告会社との間の賃貸借契約上、加入が義務づけられている団体にすぎない。そして、被告組合はもとより賃借人が構成する団体について、憲法上、労働組合のような特別の定めがないことはいうまでもない。
以上の諸点に照らすと、被告会社と被告組合との間の合意に関し、労働組合法一六条又はその立法趣旨を類推することはできないといわなければならない。
(五) 不当利得の法理により追加入店保証金及び特別賃料又は右各相当額の返還を請求することができるとの被告会社の主張について
前記第三の一の事実及び弁論の全趣旨によると、被告会社が施設改善事業の費用を支払ったものと認められるが、被告会社は、結局のとおり、追加入店保証金及び特別賃料を支払った他の賃借人との衡平を問題としているにすぎず、本件において、原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品、原告おたふく及び被告馬やどの利得や被告会社の損失の具体的な内容や因果関係については主張、立証がない。したがって、被告会社の右主張は理由がない。
(六) 第三者のためにする契約に関する被告会社の主張について
被告会社は、本件改装事業が被告組合と被告会社の共同事業であること、虹のまち地下街の店舗の賃借人が被告会社との賃貸借契約において被告組合に加入することが義務づけられていることを理由に、第三者のためにする契約(民法五三七条)の趣旨を類推すべき旨を主張しているが、そのような事実があるからといって、被告会社、被告組合、右賃借人が第三者のためにする契約におけると同様の状況にあるとは到底いえない。被告会社の主張は、その前提を欠いており、採用することができない。
(七) 信義則に関する被告会社の主張について
追加入店保証金及び特別賃料の支払義務は、被告会社と商店街店舗の賃借人との個別的合意によって生じるものであり、被告会社としては右合意がない以上、それらを請求する権利がないことは、先に説示したとおりであって、このことは、信義則により左右されるものではない。
3 まとめ
以上のとおりであるから、被告会社の掲げる根拠はいずれも理由がない。
六 争点6(原告尾田と被告会社との合意は、錯誤に基づくもので無効か。)について
先に説示したとおり、本件総会決議は無効であるとはいえないから、原告尾田が本件総会決議を有効であると判断したとしても、同原告に錯誤はない。
七 争点7(被告長谷川の事前積立賦課金の支払義務の存否及び額)について
本件全証拠によっても、被告会社と被告長谷川との間で、本件総会決議の後、虹のまち地下街の店舗(七九・二平方メートル)について、新たに賃貸借契約が締結された事実を認めることはできない。そうすると、被告会社と被告長谷川との間では、本件総会決議より前に締結された賃貸借契約(店舗面積四三・六平方メートル)及び委託直営契約(店舗面積三三・六平方メートル)が存続していることになる。
そして、前記第三の一の事実によると、委託直営契約の受託者は、組合員としての資格を有しないから、被告組合は、被告長谷川に対し、四三・六平方メートルの店舗についてのみ、事前積立賦課金を請求できることとなり、平成三年八月分から平成五年一月分までの事前積立賦課金の額は、合計三五八万三四八四円となる。
八 結論
1 原告山洋食品、原告北浦、原告尾田、原告美喜食品及び原告おたふくの被告組合に対する本件総会決議の無効確認請求(A1、C1各事件)は、本件総会決議が無効であるとはいえないから理由がない。
2 被告組合の事前積立賦課金及び定款所定の割合による遅延損害金請求(D事件)は、本件総会決議が無効であるとはいえないから、原告山洋食品、原告北浦、原告美喜食品、被告馬やど及び被告エーワンベーカリーに対する関係では理由があるが、原告おたふくに対する関係では、同原告は事前積立賦課金の一部一八九一円を既に支払っているから二五〇万四九〇四円及びこれに対する定款所定の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がなく、被告長谷川に対する関係では、賃貸借契約は四三・六平方メートルの店舗に関するものの他に存在することが認められないから、三五八万三四八四円及びこれに対する定款所定の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余は理由がない。
原告尾田の被告組合に対する、事前積立賦課金として支払った金員に関する不当利得返還及び民法所定の割合による遅延損害金請求(C1事件)は、本件総会決議が無効であるとはいえないから理由がない。
3 原告美喜食品及び原告おふたくの被告組合に対する高度化事業特別賦課金及び共同施設火災保険賦課金債務の不存在確認請求(C1事件)は、本件総会決議が無効であるとはいえないから理由がない。
4 被告会社の追加入店保証金及び商事法定利率による遅延損害金請求は、被告尾田に対する関係(C2事件)では、被告会社と原告尾田との間で追加入店保証金の支払に関する合意が成立し、同原告の錯誤は認められないから理由があり、原告山洋食品(A2事件)、原告北浦(A3事件)、原告美喜食品、原告おたふく(右両名につきC2事件)及び被告馬やど(B事件)に対する関係では、右五名と被告会社との間で追加入店保証金の支払に関する合意の成立が認められないから、不当利得返還請求を含め理由がない。
5 原告山洋食品、原告北浦、原告美喜食品及び原告おたふくの被告会社に対する追加入店保証金債務不存在確認請求(A1、C1各事件)は、右原告らと被告会社との間で追加入店保証金の支払に関する合意の成立が認められないから理由がある。
6 原告尾田の被告会社に対する追加入店保証金として支払った金員に関する不当利得返還及び民法所定の割合による遅延損害金請求(C1事件)は、原告尾田と被告会社との間で追加入店保証金の支払に関する合意が成立し、同原告の錯誤は認められないから理由がない。
7 被告会社の特別賃料及び商事法定利率による遅延損害金請求は、原告尾田に対する関係(C2事件)では、被告会社と原告尾田の間で特別賃料の支払に関する合意が成立し、同原告の錯誤も認められないから理由があり、原告山洋食品(A2事件)、原告北浦(A3事件)、原告美喜食品、原告おたふく(右両名につきC2事件)及び被告馬やど(B事件)に対する関係では、右五名と被告会社との間で特別賃料の支払に関する合意の成立が認められないから、不当利得返還請求を含め理由がない。
8 原告尾田の被告会ミに対する特別賃料債務不存在確認請求(C1事件)は、同原告と被告会社との間で特別賃料の支払に関する合意が成立し、同原告の錯誤は認められないから理由がなく、原告美喜食品の被告会社に対する特別賃料債務不存在確認請求(C1事件)は、同原告と被告会社との間で特別賃料の支払に関する合意の成立が認められないから理由がある。
9 原告おたふくの被告会社に対する不当利得返還及び民法所定の割合による遅延損害金請求(C1事件)は、同原告と被告会社との間で特別賃料の支払に関する合意の成立が認められないから理由がある。
(裁判長裁判官 小佐田潔 裁判官 大薮和男)
裁判官 齋藤 聡は、転補のため署名押印することができない。
(裁判長裁判官 小佐田潔)